Vol.21 保険金の不払いは請求主義が原因
投資や保険など、お金に関する様々な質問や相談に
幅広い分野のプロフェッショナルがズバリ答えるこのコラム。
今回もVol.15、Vol.16、Vol.17、Vol.18、Vol.19、Vol.20に引き続き、
「保険が請求漏れにならないための
注意点を教えてください」を取り上げます。
相変わらず続いているようです。
我が家でも生命保険や医療保険など
複数の保険に加入しているのですが
何かの際に保険金の不払いや請求漏れに
巻き込まれてしまわないか心配です。
そんなことにならないためにも
どのような点に注意するべきでしょうか。
(30代 女性)
今回は、某大手生命保険会社に勤務して
長年営業を担当してきたSさんに、
なかなか聞けない保険会社の裏事情も含めて
答えていただきました。
S プロフィール
某大手生命保険会社勤務
ファイナンシャルプランナー資格所持
某大手生命保険会社に入社後、
地方の営業所長を歴任。
現在は本部にて法人営業を担当。
お酒が入ると、歯に衣着せぬトークがいきなり炸裂する。
なぜ保険金の不払いがこれほど大きな問題になったのかと言えば、
そもそも保険の契約は「請求主義」で成り立っていたんです。
つまり、契約をした後でお客様から請求があってはじめて、
保険金を支払う仕組みになっていました。
(注 : 死亡は「保険金」、入院は「給付金」などど
分けて定義付けする場合もありますが、
以下の文書ではわかりやすいように
お客様に支払われるものを一律「保険金」としています)
ですから、保険金を受け取ることができた場合
(例えば病気や事故で入院した場合)でも、
お客様から請求のなかったケースでは
保険会社は保険金を支払うことができませんでした。
これが保険金の不払いとして話題となった原因の一つです。
請求が漏れてしまう理由ですが、
(保険会社に勤めている私が言うのも何ですが)
お客様が保険に入りすぎていたり、
加入している保険の内容を
理解していなかったからだと思います。
確かに保険業界には「契約をとってナンボ」
という気持ちもありました。
保険金の支払いより、
契約の獲得に意識が向いてしまいがちでした。
しかも、契約の際には、
不動産の売買のように重要事項に関する
詳しい説明がない場合がほとんどです。
例えば契約の際に病歴を告知していなかったため
保険金が支払われなかったケースも、
しっかり私たちが契約時に説明をすべきだったんです。
結果として、必要のない保険や不適切な保険に
理解不十分なままお客様が入ってしまったことが、
不払いや請求漏れの要因のひとつとなったのです。
もちろん、保険会社にも原因があって、
保険に様々なバリエーションの特約を
増やしすぎてきたことも事実です。
自分たちでも消化しきれていないくらいですから。
たとえば、お客様が入院されて保険金の請求があったときに、
病名によっては契約上は追加で支払いの発生する
特約の内容に気がつかないで、入院費だけを支払ってしまったり。
本来なら保険会社の査定部門が、
入院費に対する保険金の請求があった場合に、
「手術費等他の項目についても保険金が支払われますよ」と
伝えることができれば良いのですが、
処理だけに追われてそこまで対応できていませんでした。
お客様に営業の担当者がしっかりついていれば、
相談にのることで支払いに対してもフォローできるはずが、
異動や退職などで契約時の担当者が外れてしまったのに
引継ぎが上手に行われないで、
後任の担当者がつかないまま
対応が手薄になっていた契約も多かったのです。
これらが原因となって、
保険金の不払いが多数発生してしまいました。
保険会社も反省すべき点は多かったと思います。
ただ、保険金不払いの問題に対する対応を通じて、保険会社は大きく変わりました。
私の会社でも数ヶ月にわたって土日をほとんどつぶして、過去5年間のお客様の診断書をチェックし直しました。
その上でデータベースを作成して、
請求漏れが発生している可能性があるお客様には
電話や直接訪問をして確認をとりました。
この一連の作業を通じて、
私たちの意識も大きく変わりました。
私は営業ですので、どうしても売上や成績を
一番に考えてしまいがちでしたが、
話を聞き、請求漏れを解消して、
お客様から感謝されることで、
保険という商品の大事さを改めて認識することができました。
保険会社の姿勢もこれまでの「請求主義」から、
「請求干渉主義」に変わりました。
現在では保険会社から
「この場合は保険金を請求できるのではありませんか?」と
積極的にお客様に呼びかけるようになりましたので、
これまでのような問題は起こりにくくなっているはずです。
実は、お客様自身がちょっとしたことに気をつけることで、
保険金の請求漏れの発生を防ぐこともできます。
この点については次回詳しく説明します。
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